ゼロ年代の想像力 (評価:星4つ)

今更ながら、ゼロ想とリトピ時代を読みました。とりまゼロ想の感想だけ。

 

 

ゼロ年代の想像力(2008)

宇野常寛氏のデビュー評論。2007年(たぶん)に始まった雑誌連載がもとになっているそう。「ゼロ想がサブカル論壇に衝撃を与えた」ってどっかで誰かが言ってました。

 

 

ゼロ想のグッドなポイントとしてまず挙げられるのは、取り扱う作品数の多さとジャンルの多様性。村上龍岡崎京子麻枝准、文庫版ではAKBも。巻末に膨大な索引がついていて、作家名と作品名が網羅されています。ちなみに村上春樹はあんまり言及されてないです。

 

セカンドポイントは、「レイプファンタジー」という強力なキーワード。宇野氏としては、AIRという病弱な少女から好かれるだけのストーリーに感動する男共は「きもちわるい」。エヴァ旧劇のラストシーンでのセカンドチルドレンの彼女の呟きに興奮する男たちも、やっぱりそのまま「きもちわるい」。それがレイプファンタジーという幻想。改めて考えると、多くのサブカル的ストーリーにそういう幻想が見られます。

 

三つ目もキーワードで、「決断主義」。碇シンジは非決断主義者の見本のような子で、エヴァに乗るか乗らないか、最後まで悩んでてはっきり決断できない。一方のルルーシュは第一話で既に、ブリタニアを破滅させる代償としての大量殺戮を行うことを決断している。現実世界に即して考えると、冷戦が過去のものとなり、正しさが絶対的なものでなくなっている今、決断には勇気が必要だということだそう。

 

 

評価ですが、5点満点中で4点です。もしいつか宇野さんがめちゃくちゃ面白い小説なりなんなりを想像してくれたら、4点が5点になります。

 

 

なんとなく思ったのですが、サブカル批評の書籍って、その作品のあらすじや設定を説明するだけでだいぶ行数を稼げるぽい。らくちん。